その頃SF映画で、世の中に夢や宇宙へのロマンを与えた、「E.T.」。私の記憶の中に残っている、劇場で観た最も古い映画だ。
私にとってこの映画は当時、恐怖そのものだった。
なにせ、あのグロテスクな宇宙人ですから、子どもには衝撃的であったわけだ。
そして、ここからが問題であった。
映画を観たその日の夜、俺は夢をみた。
家で夕食の準備をするシーンだった。
母に頼まれてご飯をよそおうと炊飯器に手をかけあけると、
「ぎゃー」
という鳴き声とともに、炊飯器の中に「E.T.」を見た。
もう一度言います。
炊飯器の中に、E.Tです。
当時、シュール、という言葉さえない子どもに、この気持ちを整理できるすべもなく、ココロに深いキズをおってしまった。
大人になった今、炊飯器に手をかける時「E.T.」を思い出してしまうのは言うまでもない。子どもの感受性は改めてゆたかであると感じるわけであります。