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新潮派?岩波派?2大出版社の文庫本に寄せた思いを知りたい

 文庫本サイズは、持ち歩きにも便利で愛着が湧いてくる本のサイズだと思っています。様々な出版社の「文庫」がありますが、困るのは同じタイトル作品が複数の文庫から出版されている時ですね。本屋さんってどうして出版社毎に本棚を変えるんでしょうね。本はタイトルと著者で探すことが多いので、本屋さんでもはいくつもの出版社の棚を飛び歩くか、手元のスマホで検索して探しに行く羽目になります。出版社それぞれ背表紙が統一していて見やすくしているので、出版社毎の棚は確かに見やすいので、一長一短ですね。

 文庫にはそれぞれ理念がある

 さて、よくどの文庫がいいですか?という質問がありますけど、タイトルによってある場合とない場合があるので、どの文庫がいい、というよりもこの文庫はこういう理念だ、とか、こういう考えだと知っておくだけでいいと思うのです。読んでいる文庫の理念とか秘密を少しだけ知っているだけでも、その文庫を選んだ理由にもなりますよね。

 ここでは、第1次文庫ブームを支え現存する新潮文庫と岩波文庫をピックアップしてまとめておきたいと思います。

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新潮文庫

 「読者に、古今東西の良書を、廉価(安価)で提供したい」という考えが根底にあるようです(ほぼ日刊イトイ新聞の「新潮文庫のささやかな秘密。」より)。現存する文庫の中で最も古い(大正3年)創刊です。当初は現在の文庫判サイズよりも更に小さく、ハードカバーでした。その後、いくつかのスタイルを経て、戦後昭和22年第1次文庫ブームの時に、現在の文庫判サイズとしてスタートし現在に至っています。その時の第1号は川端康成の『雪国』です。

 新潮文庫の特徴はなんといっても、スピン(栞)が付いていることですね。最初に表紙にスピンを取り付けるから、本の上側を断裁できない。だから、新潮文庫は本の上側は不揃いなのです。スピンをつけている理由は、「安価で軽装な文庫本といえども書籍であり、これを蔵書として扱う読者にこたえたい」ということです。

 

岩波文庫

 理念は岩波文庫のすべての巻末に記されている「読書子に寄す」そのものです。明確に定義付けされています。ドイツのレクラム文庫を模範としていて、敢えて簡便に言ってしまうと、古今東西の文芸・哲学・社会科学・自然科学等、皆が読むべき古典的価値のある書を刊行して、全ての人にとって必要な生活向上や生活を見直す為の資料を提供する、ということであると思います。

特徴はなんといっても、絶版しないことですね。文庫出版作品に普遍的な価値を信じている確固たる自信を感じます。

 

その他もたくさんの文庫本がありますけれども、理念がしっかりしている文庫は素敵ですし、応援したくなります。

手元にある文庫に、作品への思いと同時に、出版社への思いも持ってみてはいかがでしょう。